ディンギー製作記-1

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ディンギー製作記-1


  • 1-0 センターボックスの製作
    • T-girder

      まずこのセンターボックスを作ります。

      幅90mmのボトムパネルをはさみ、2枚のセンターボックス・パネルがマストステップ付近からトランサムまでフレームに直行して延びています。この船の大きな構造的特徴であるセンターボックスは、4枚のフレームと共にT字型の骨組み(梁/桁、T-girder)となり、設計者Paul FisherがWater Craft誌上*1で述べている「エッグボックス構造」をなします。これは構造的強度の向上に寄与するのはもちろん、建造過程での歪みや捻れを防止してくれると思われる。そして副産物ですが浮力体やオールなどの物入れにもなる。

      それにしてもこのセンターボックスがコックピットを縦断しているというのは、あまりに邪魔。足も伸ばせないし、横になることもできない。そこでフレーム部とスターンバルクヘッド部を残し、コックピット部は撤去することにする。ただしマストステップからトランサムまで貫通するこのセンターボックスパネルは接いだ一枚の板からとり、コックピット部のボトムパネルとの接合部は、25mmの厚いフィレットで補強し竜骨としての役割を残すことにする。

      センターボックスにはダガーボードケース及びマストステップが組み込まれるので、パネル内面は予めエポキシによる防水加工をしておく必要がある。もちろんダガーボードケース内面の防水加工も忘れちゃいけない。

  • 1-11 スカーフジョイント
    • 設計図からのロフティングに備えてまずは4x8マリン合板をスカーフジョイントします。

      スカーフ治具で4ft幅を一気にスカーフィング。合板が僅かに波打っているためスカーフが浅かったり深かったり一定にならず、スカーフラインが直線にはなりませんが、これはまぁ仕方ない。柔らかなオクーミ材のせいかもしれませんが。スカーフラインを見て分かるように使用したマリン合板は5プライですが、各プライが同じ厚みでなく心材が厚く、表材が薄いプライとなっています。これじゃBS1088は取得できませんね。

      スカーフカット スカーフカット

      スカーフ接合部は写真に見るようになかなか綺麗な断面を見せています。
      スカーフ接合部
      気をつけるのは二枚の合板が真っ直ぐに接合されること(直線合わせ、alignment)。長い定規を合板エッジに当てアラインメントを取ったら二枚を接合部で釘留めしておきます。はみ出たエポキシが木部に付かないようテープを張っておきます。
      二枚のアラインメントを取る
      接着面は木口でエポキシが良く浸透するので、予め生のエポキシでサチュレーションコートをしておきます。接着用エポキシ(アエロジルを混ぜてマヨネーズ状にしたエポキシ)を塗布してから釘を裏側から差し込み、もう一枚の合板の穴を合わせて直線合わせ完了です。しっかりクランプしたら釘は抜いておきます。
      サチュレーションコート
      厚手の板で圧着。それでも中央部は浮いてくるので薄いクサビを挟んでおきました。はみ出たエポキシを出来るだけ綺麗に拭っておかないと後で整形の手間が大変になります。
      圧着
      クランプを外してみると。テープを張っておいたけれど接着面からはみ出たエポキシが残念。
      接着部の様子
      スカーフをカットした時エッジが直線にならず凸凹していたので接着ラインはこんな具合。もう少しジグの調整をすればエッジが厚くなり直線に出来たかも知れませんが、そうするとカットした後にエッジを薄くサンディングする必要があったでしょう。今回はこれで良しとしました。
      接合部のアップ
      はみ出たエポキシをカンナ(ブロックプレーン)で綺麗に削り、サンダーかけて仕上げます。
      接合部を整形
      接着部の拡大写真です。
      接合部

      こうして作った4x12ftの板からセンターボックス両サイド、ボトムパネル、サイドパネルを切り出します。

  • 1-12 ロフティング
    • 作業台の上でロフティングをと思っていたのですが、4ftの板の向こうまで手が届かないし真上からメジャーを読むことも釘を打つこともできない。それで作業台を解体し床に這いつくばっての作業となりましたが、そもそも6畳間で作業することに無理がある。
      ステーションラインを描く

      まずむやみにデカイT定規で305mm間隔でステーションラインを引き、パネルの各ポイントを印しそこに釘を打っていきます。3枚のパネルでポイント数は66+α。
      ステーションライン上のポイント ポイントに釘を打つ

      これらポイントを真っ直ぐで良く曲がる材でスムースなカーブに結んでいくのですが、設計者Paul Fisher氏お薦めは『使わなくなったプラスチックのカーテンレール』ですって。そんなチャチなカーテンレールは日本では手に入らない。ホームセンターうろうろして見つけたのは180cmの細長い材(多分MDF、用途不明)、これを半分に細くリッピングし長く接いで使いました。
      スムースなカーブ

      バウ先端の微妙なカーブだけは設計書に「大きなマス目に転記しポイントを拾うように」と指示があるのですが、横着して設計図を拡大コピーし原寸図を作り、それをカーボン紙で転写しました。
      バウのカーブ バウのカーブ

  • 1-13 パーツの切り出し
    • スカーフしたマリン合板に原寸図を描いたらパーツを正確に切り出していきます。

      こんな風に合板の上に這いつくばって丸ノコでカットしていくのですがいかにも辛い姿勢です。小さめ(125mm)の刃に替え板厚+数ミリだけ刃がベースプレートから出るようにしていますが、曲線を正確にトレースできる自信がない。左勝手で刃がベースプレートギリギリに付いている丸ノコがあると良いのに・・・
      カットの様子

      そこでカットラインに合わせれば(だいたい)正確にラインをトレースできるよう写真のような治具をノコ刃のすぐ前に取りつけてみました。
      治具のアップ 切っているときの目線はこんな具合

      これでラインの僅か外側を切っていくことが出来ました。その後ローアングル・ブロック・プレーンで見た目にスムースになるように修正しておきます。
      治具

      切り出したのは4x12ftの板からハルのパネルを片側分3枚、それにボトムパネル、フレームが3枚にトランサムそしてセンターボックスの左右パネルです。合計13枚のパーツでほとんどの合板がなくなり、なんだかちょっと寂しい。
      ハル・パネル片側分 切り出した全パーツ

      切り出した部材の内、左右ペアのもの(パネル)は二枚を重ねてみるとやはり微妙に誤差があるためもう一度整形します。木口をローアングル・ブロック・プレーンや反りカンナで削っていきます。S&G工法ではパネル等部材の精度がハル形状を決定的に左右しますから、ここは納得のいくまでやっておかなくちゃ(とは言えスティッチしてみたらあちこち不具合が出て削ったりするんですけど)。
      パネルを重ねて整形

      この後、センターボックスにフレームを差し込む切れ込みやら軽量化のための切り欠きを細工し、仮組立前の部材作成は完了です。

  • 1-2 ダガーボードとダガーボード・ケース組み立て
    • センターボックス内にダガーボードケースが組み込まれますが、設計図ではケースの内寸にダガーボード自体の厚みに加えて左右2mmの余裕を取っています。製作するダガーボードの厚みは材厚+エポキシコートとなるため、ケース内寸は現場合わせ。出来上がったダガーボード厚に合わせる必要があるためまずダガーボードを作っておきます。

      設計図では9mm厚合板を積層するよう指定されていますが、中心に6mmロシアンバーチ合板を用い、その両側にオクーミ合板6mmを積層します。
      ダガーボード部材

      まず表材二枚の内側に生のエポキシを塗布してサチュレーションコートをしておく。それから心材の両面にエポキシ(マヨネーズ程度、slow硬化剤を用い作業時間を稼ぐ)を塗布しクランプで圧着。写真では角材で外周をクランプしているだけに見えるが、裏は200mm幅米マツ材で中心部分まで圧がかかるようにしてある。クランプを23個使っています。
      ダガーボード積層

      積層されたボード外周をまずトリマーで丸く面取り。リーディングエッジはこれで良しとするが、トレイリングエッジは洋カンナで薄く仕上げます。仕上げにベルトサンダー(#240)を使い、それからサチュレイション・コート。さらにその後10%のグラファイトを加えたエポキシで表面をコートします。
      ダガーボード積層

      ダガーボード・ケースは9mm厚の指定ですが6mmオクーミ材と6mmロシアン・バーチの積層とし、両面とも予めエポキシによる防水加工を施しておきます。こうした平らな面ならプラフィルム(OPP 80μ)を張っておくと見事にツルツルに仕上がります。内面両端にはエンド・ログ(50mm x 24mm)をつけ箱形に仕上げます。
      ダガーボードケースの外面 グラファイト入りエポキシにより黒色の内面

      エンドログ(330mm x 50mm x 24mm)が前後に2本必要ですが力のかかる場所なので手持ちのオーストラリアン・サイプレス(堅く反りにくい材)を使うことにします。しかし所定寸法(特に厚み)に製材するのが一苦労です。テーブルソー&自動カンナがあれば造作もないことでしょうがそんな道具は持ち合わせない。手持ちの道具でなんとか精度を出そうとこんな切断治具で間に合わせます。厚みは友人から借りてきた電動カンナでなんとかします(ついついデジタル・ノギスなんかで測るから気になるわけで、エポキシによる接着では「最大3mm」の隙間まで充填オーケーと言われていますから余り神経質になる必要はない、家具作ってる訳じゃないし。こんな道具でも±0.2mmまでには追い込めます)。
      切断治具

      作ったエンドログを接着する前に内面にエポキシによる防水加工をしておきます。
      内面の防水処理

      ケースの補強そしてケースをボトムパネルに固定するためにケース外側に補強材が必要ですが、これの長さが480mmあるため上記切断治具では長すぎてカットできない。30mm厚米マツ材を丸ノコで粗くリッピングし、直角はルーター・テーブル(トリマーだけど)で50mm幅に整形、電気カンナで25mmの厚に揃える。当然ながらハル形状はわずかにロッカーがついているため、この補強材にも僅かな反りが必要になりますがこれは手カンナで頑張りました。
      外側補強材

      エンドログと外側補強材をドライフィッティングしてからステンレス・タッピングとエポキシでケースを組み立てます。しかし組み立ててみたら完璧に直角が出ていない(溜め息)。しかたないから出来上がりを削ってやるけど、こんなアマチュアらしい道具が活躍します。両サイド板をタッピングとエポキシで接着・固定したらダガーボードケースの出来上がり。

      さくさく削ってロッカーをつける 接着

      さてこれでセンターボックスの部材が出来上がりました。次はこれらを直角に注意しながらドライフィッティングします。

  • 1-3 センターボックス仮組
    • ハルを作るための部材が出来上がりましたが、組立は場所を工房に移して行います。でも、船の形を見てみたいので出来上がった部材を組んでみます。
      センターボックス
      写真のようにマストステップ付近からトランサム(この写真では取りつけられていない)まで二枚のセンターボックス・パネルが竜骨のように走っています。ここに3枚のフレーム(その内バウフレームはまだ取りつけられていない)を差し込みます。両方に切り込みを入れ嵌め込んでいるので、その位置も取りつけ角度も比較的簡単に確保することが可能ですし、構造の歪みも少なくて済みます。設計図ではセンターボックスは後部フレーム前で一度切れ、フレーム後方で再度突き合わせていますが、やはり一枚のパネルとした方が良かろうと変更を加えました。そのため後部フレームもセンターボックスに差し込み固定しています。

      後部の構造
      トランサムはオクーミとロシアン・バーチの積層ですが、内側のロシアン・バーチにセンターボックスを嵌め込むための切り込みを入れ、トランサム接合位置を確保しています。

      船の構造ほぼ全体
      センターボックスにフレームとトランサムが付いたこの船の構造ほぼ全体像です。ボトムパネル(センターボックス下に少し見えている)にダガーボードケースを接着、更に左右のセンターボックス・パネルを垂直に固定し(ここはスティッチせず補強材で固定する指定ですがエポキシ・フィレットで代用します)、フレームとトランサムを固定するとハルの構造が完成、その後は外板をスティッチしていくことになります。

      予めの防水加工やら垂直、直角を出す工夫やら色々考えておかなきゃいけない段取りがありますね。とりあえず船の形が見えたので大満足。

  • 1-4 ドライフィッティング
    • 出来上がったダガーボードケースをセンターボックスに組み込み、さらにフレームを差し込んでドライフィッティング(dry fitting、接着前の仮組)をしておきます。部材に設計図から転記したフレーム取りつけ位置などが正確にあっているかどうかをチェックするため、そして組んでしまってからでは手の届かない箇所に予めエポキシ処理をしておくためです。

      センターボックスとフレームが直交するように、またセンターボックス幅を正確に確保するために治具を作っておきます。
      組立治具

      治具と沢山のクランプを使ってセンターボックスに直交する3枚のフレーム、それにトランサムをセンターボックスに差し込んで船の骨組み構造を作ります。
      バウから見たところ

      スターンから見たところ

      バウから見たところ

      二番目のフレームの直前にダガーボードケースが組み込まれます。
      ダガーボードケース

      ボトムパネルにはロッカー(反り)がついており、それはダガーボードケース前-1mm、ダガーボードケース後方で-6mm、トランサムで-14.5mm、一番前にフレームで-20mmとなっています。実際に端材を差し込んでボトムパネルを曲げてみると、結構なロッカーがつくことが分かります。この状態で各フレームが部材に記された設計位置とちゃんと合致していることを確認しました。
      ボトムのロッカーはこれ位
      実際に船の構造をドライフィッティングしてみると、この船の特徴であるセンターボックスの有り難さがよく分かり、こうした構造のお陰でフレーム位置が正確に決められます。

      確認が済んだらもう一度バラし、ボトムパネルにダガーボードケースを接着する作業に取りかかります。写真の状態で治具を用いてダガーボードケースを垂直に接着し、ボトムパネル下からビス留めします。
      ダガーボードケースを接着

  • 1-5 センターボックス本組立(05/17)
    • ロッカー(反り)のついたボトムパネルにダガーボードケースを接着するに際して注意したいのは、ダガーボードケースが船のセンターに真っ直ぐ、かつ垂直に取りつけられること。ケースをボトムパネルに置いてみたら幸いにもガタつきもなく垂直になっていましたが、これをエポキシで接着しタッピングで留める際に歪む恐れが無くはない。そこで写真のような治具を作り、外側から支持しておくことにしました。
      ダガーボードケースを支持する

      ダガーボードケースを支持する


      さて、センターボックスの形状ができあがってきますのでここからは場所を工房に移しての作業となりますが、それにあたって船台を改造しておきます。カヤックより幅広でフリーボードの高いディンギーですから船台の高さの調整が必要(低すぎると作業中腰に来ちゃうし・・・)。
      船台を改造
      また船を水平かつ船台に平行に保持しておくことが必要ですので、ハル形状のクレイドル(揺りかご)の上に乗せるのが順当でしょうが、この船は幅180mmのボトムパネルがあるためクレイドルがなくても平らに置いておけます。
      ボトムパネルを船台に平衡に設置
      この状態でボトムパネルにダガーボードケースを接着します。ロッカー(反り)がついていますのでまずボトムパネルに下穴を開け、ケースを置いた状態で今度は下からダガーボードケースに下穴を開けます。たっぷりのエポキシとタッピングで両者を接着・固定します。エポキシが全部絞り出されないように注意しながらビスを丁度良い加減まで締めておきます。
      ダガーボードケース接着

      ダガーボードケースを接着
      このようにボトムパネルに垂直にダガーボードケースが接着されたのを確認して竜骨に相当する部分の完成です。
      ボトムパネルに垂直
      次にボトムパネルに左右センターボックス・パネルを接着します。パネル形状に沿ってボトムパネルが反るように端材を重ねてカーブをつけていきます。両パネルの間には設計寸法の端材を挟み両者の間隔を保持します。このあたりが船の形状を左右しますから極力正確に作業を行います。
      センターボックス左右パネルを接着
      これでセンターボックスが出来上がり。ここに3枚のフレームが直交し船の形になってきます。あとはサイドパネルをスティッチすればハルの完成となりますが、これら部材の接着・固定には補強材を使わずエポキシ・フィレッティングで代用するつもりです。
      センターボックス全景

      センターボックス全景
      それにしても邪魔なカヤック、工房の外へ追い出すことにします。


      (追記)

      おっと忘れていました。センターボックスを組んでしまってからでは作業-特に防水処理-のし難い箇所に予めエポキシによる防水処理をしておきます。ダガーボードケース廻りですが、ついでなのでフレームなどの垂直面にもエポキシ・コートをしておきます。防水処理が目的ですがニス塗りの下地(プライマー)でもあります。

      ニスなら6回以上塗り重ねなければいけないところをエポキシなら数回で必要な塗膜を作れますが、樹脂は比重が大きいから余り厚い塗膜にはしたくない。そこで今回はSystem Three Epoxy汎用品ではなくClear Coat Epoxyを使うことにしました。無色透明で非常に粘度が低いため-混合物粘度は400mPa・s ミリパスカル・秒と汎用品の半分ほど-まるで塗料を塗るように薄く塗布できると期待します。

      部材にエポキシ・コーティング

      部材にエポキシ・コーティング、これはトランサムの内側

      施工に際しては後でフィレッティングを施す部分をマスキングし、ハケで薄く塗布した後シリコン板でスキージします。ハケでは結構厚く塗布されるエポキシがこれで薄膜を残してきれいにぬぐい取れます。硬化後一度軽くサンディングしてからもう一度エポキシを塗布しスキージすれば、非常に薄いけれど防水効果のあるニス下地が出来上がります。

      部材にエポキシ・コーティングした後に接着面をお掃除

      二度のエポキシ・コーティングが済んだらはみ出たエポキシをスクレイパーで削り取り接着面をキレイにしておきます。

      すでに気温が25℃近くあるため久しぶりにエポキシがヒートアップしました。もうこれからはslow硬化剤が必要になりますが、Clear Coatはポットタイムが長い(60分)ため1種類の硬化剤しかありませんので、口径の大きな攪拌容器を使う必要がありました。


      長くなりましたので【ディンギー製作記-1】はここまで、ページを改めます。



*1 Fisher, P., (2013) Egg-Box Hull Construction. Water Craft. No.97, 30-33.

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