ディンギー製作記-5(艤装)
船のフィッティングと併行して様々な艤装品の製作を進めます
- ダガーボード
- ラダー
- ティラー
- マスト
- ブーム
- ヤード
5-1 ダガーボード製作(9/14)
すでにダガーボードは艇製作に着手したとき最初に作っておきました。ダガーボード・ケースを作るためにダガーボードの原寸が欲しかったからですが、以来、仕上げをせずに放置していました。6mmロシアンバーチ合板をコアにし、その両側に6mmマリン合板を積層し18mm厚のボードを作りました。まだ仕上げ前の様子ですが、試しにエポキシに着色(黒)してみたかったのでグラファイト粉をエポキシに混ぜ塗布しています。
5-2 ラダー製作(10/2)
A級ディンギーのラダーは下部が大きく膨らんだ大変重いもので、ギコギコ漕ぐとちゃんと船が進んでしまうほど、もちろんこのラダリングはルール違反でしたが。製作中の船のラダーはそれに比べると大変スリムでアスペクト比が大きい。材は6mmマリン合板の二枚積層、ピボットするようにラダー上部の加工が必要です。
写真の左がラダー上部でここにピントルが付きます。右側濃茶のマリン合板がラダーブレードで、この前後エッジはファイバーグラスで補強してあります。ブレードをピボットさせるため見えている薄茶の部分とコアになる材でブレードを挟み込みます。
(9/15追記)
そろそろハードウェア(金物)を揃えておかなくちゃいけない。ラダーに関してはガジョンとピントル。ところでピントルはラダーに付くのかそれともトランサムにつくのか、はたと悩む。昔の事とて正確な記憶がない。それで現物を眺めてみると、
なるほど、この船ではガジョンとピントルがラダーに付いてる、こういう仕様もありなのですね、ハハハ。この金物は恐らくシリコン・ブロンズでラダーブレードをピボットさせるシートを通すための穴まであいてる。こうした金物が手に入らないわけじゃないし、英国や米国のクラシック金物専門店(受注生産のお店もある)のカタログを眺めると羨ましくて堪らないが、実際使うのはこういうステンレス製ですね。豊富なサイズを揃えた米国のお店に発注中。
(10/2追記)
ラダーなど艤装品の製作を進めていますが、細かな加工が必要だったり、エポキシによる防水加工に加えて複数回の塗装(ニスではなくポリウレタン塗料ですが)をしたりとなかなか時間と手間がかかります。
ラダーはピボット可能(跳ね上げ式)とするため、ステンレス軸を通すためにラダーに真鍮パイプを埋め込みましたが、ここにもエポキシ防水加工が必要。
写真は下からラダー上部(まだ塗装前)、ラダー本体(塗装済み)、ダガーボード(塗装済み)です。ラダー本体を挟み込む上部との隙間(ここにもエポキシ防水加工が必要)は余裕を持って作ったつもりでしたが、ラダー本体の塗装を終えてから挟んでみたらキツキツ。ラダーが湿気で膨らんだら動かなくなってしまいそうで、再度厚み調整のためラダーを左右0.5mmずつ研磨して薄くしました(防水加工のやり直し)。
5-3 ティラー製作(10/20)
ティラー材にはAsh材(トネリコですかね)が指定されており、確かに粘り強い樹だから打ってつけなのでしょう。しかしマリン合板端材がたくさんあるのでこれを積層してやることにしました。せっかく積層するからちょっと曲げてやろうとTOYOさんにそのやり方を教えて貰い挑戦。エポキシ接着剤で合板が滑ってズレることを予想し少し大きめに部材を作っておきました。クランプで無理やり曲げつつたっぷりのエポキシで合板を8枚積層していきます。
出来たヤツをバンドソーでカット。厚みのある材の曲線切りが可能というのは有難い。ラダー上部の穴にぴったり嵌るよう整形し、面取り、最後に紙やすりで整形して出来上がりです(多分エクステンション・ティラーが必要でしょうけれど)。
5-4 ガジョンとピントル取り付け(10/30)
ラダー、ティラーそれにガジョンなどの金具はクラス艇のものだとすぐに手に入りますから(オプティパーツとかね)それを買っちゃおうかと考えたこともありましたけれど、OPではちょっと華奢だしレーザーではスタイルが合わないかな。それでやっぱり自作することにしたのですがなかなかピッタリサイズの金物が見つからず、豊富なサイズを揃えていたのは米国の自作専門パーツ店Duckworksです。
木製ラダーなのでブレードは薄くても上部は厚くなるため選んだのは写真のガジョン、ちょっとごついですがこういう金物はチャチなものよりは良いだろう。ガジョン取り付けには細心の注意を払い、予めトランサムの垂直ラインを出しそれにステンレスパイプを沿わせ取り付け位置を決めました。上のガジョンはトランサム補強材にボルト穴がきますが、下は12mm合板のみ。そこでガジョン取り付け補強材をつけますが、エポキシ・フィレットが邪魔になり一部削り取りました。
1/4インチのボルト各4本ずつでガジョンを留めますが、正確に穴を開けるのって結構大変ですね。穴がわずかでもズレて開くとピントルの動きに支障が出ますから、木片に垂直に穴を開けそれを治具として用いました。8個の6.3mmの穴にキレイにボルトが通りガジョンも垂直に納まりました。上下ガジョンの幅が狭いように見えると思いますが、設計図では下部ガジョンはもっと下に付くことになっています。しかしピボットするラダーブレードと干渉しボルト穴が開けられないためこの位置がギリギリでした。
次はラダー上部にピントルの取り付け。インチサイズなので幅が僅かに狭いため両面0.5mmずつ彫り込んで48mm厚のラダー上部にピントルを取り付けます。
緩み止めはワッシャーではなくナイロンの入ったナット(ナイロック)を使っており、これは上記Duckworksから購入した取り付けキットに付属していたものです。ラダーを取り付けティラーも差し込んで動かしてみました。完璧とは言えないけれどまぁ合格点。これで後部デッキの造作に入ることができます。
5-50 スパー製作準備(2/18)
ブーム、ヤードそしてマストの製作に入ります。いずれも材木店にて柾目のスプルース材を所定寸法に製材してもらいました。届いた(材木店の職人さんがお仕事の都合に合わせてトラックで運んで下さった)材を接着のため、それに曲がらないよう治具に挟み込んでおきます。
さて、まずは材の面取りとマスト用材のBird's mouth加工が必要です。マストは中空マストとしますので、8本の材に90度の切り欠きをしなければなりませんが、4m材のルーター作業となるとルーターの両サイドにinfeedとoutfeedの4mずつ空間がいりますよね。でもそんな広い工房ではないので写真のように、infeed側は壁に穴を開け外に突き出す、outfeed側は窓を開けそこから外へ出すという苦肉の策。
複数回の切り欠き加工が必要かと思いましたが、柔らかなスプルースそして1.5馬力のルータのお陰でそれほど困難を感じることもなく1回で加工は終了、もっともBird's mouthを切り欠くのに多分失敗して折っちゃうだろうと思ったので2本余分に発注しておきました。こうした細い無垢材はどうしても反りやすく、ちょうと2本が困った方向に反っていたのでちょうどピッタリ。(材の送りと引きに手伝いが欲しかったのですが、友人の都合がつかず「エイっ、やってしまえ」と一人での作業となりました)
マスト用ステイヴスを8本合わせてみると、(当たり前だけど)おぉ8角形の中空マストができた!これを16角形に削り、さらに丸めてマストに仕上げます。
5-51 スパーの接着(2/20)
ブームとヤードは45mmのソリッドとしました。22.5mm幅の材をエポキシで接着します。作業台上に治具を固定し、そこで二枚の材を接着します。クランプする際にズレると困るので、4箇所トリマーで溝を掘りそこに硬木片(チギリ?)を入れてあります。
一日置いてまだ完全には硬化していないはみ出たエポキシをカンナで削ってやり、テーパーを付ける前の粗い整形をしておきます。曲がると困るのでブーム、ヤードはエポキシが完全に硬化するまで治具に挟み込んでおきます。
次はマストの接着。工房の長さいっぱいの材(24 x 14 x 3800)を8本治具の上で組んでみますが、意外と簡単に8角形の中空マストが姿を現します。接着する前に、マストステップ、マストホールそれにハリヤードを通す滑車の個所には補強のために心材(コア)を入れることにします。
まず5本のステイヴスを順に接着し組んでいき、そこにコアを入れ、さらに残りのステイヴスを組み合わせ接着します。長い材だし8角形に組むのに三本目の手が欲しいなぁと思っていましたが、90度のBird's mouthを組むのは意外と簡単でした(さすがに作業中の写真はありませんが)。ビニタイできつく縛り硬化まで放置し、その後8角形を円形に整形します。
5-52 マスト削り(2/22、2/25、2/26、2/28)
八角形のBird's mouthマストが出来たので、これからマスト削りが始まります。まず、Bird's mouth Jointの出っ張った部分を削り、左写真のような綺麗な八角形にします。次に右写真の黒く塗った部分をさらに削り16角形に整形。(これらはマストの端材ですが)
削る部分を上にしマストを固定して、カンナで約10mm幅(峰の部分)を少しずつ、ほんの8回位カンナを動かし削っていきます。それで16角形になりました。外径は62mm、まだほんの少しこれより太目。さらにテーパーをつけなければならないので、これからのマスト削りには時間がかかりそうです(腰にもきそうで心配)。
速く正確に削るための道具ールーターを治具に沿って滑らせるーは考えていました。自作先輩のYosiさんからはそのための図面まで書いて下さったのですが、道具作っているより手で削っちゃった方が速いかなと。
(2/25追記)
16角形になったマスト、出っ張った峰の部分をカンナで削りたいのですが、すでに峰が良く見えない。そこで(前に教室からくすねてきた)チョークでラインを引きそこを細く浅く削っていきます。小振りのカンナに替え力を入れずに優しく削っていきます。
32角形ともなるとカクカクはしていますが、角だけをカンナで削るのは恐らく無理なのでここからはサンドペーパーです。どこかでベルトサンダーに裏返したペーパーを通し、それでマスト削りをしているのを見たことがありますが、そうした道具作っているより手で削った方が速い。というわけで、#80のベルトサンダー用ペーパーを裏返して丸くしていきました。カンナで削ったツヤツヤ面がなくなるまでマストを動かして角度を変えながら削っていきました。
さてマストが丸棒になったけれど、あと先端に向かってテーパーを付けてやる必要があります。設計図ではマストホールで60mm、そこから50mmに絞り、そして先端は36mmにすることになっています。しかし3.5mで直径10mmのテーパーは無理だよなぁ。それに中空マストの内径が37mmですから設計図通りに削ったら中身がなくなっちゃう。というわけでここは適当に変更したので、あんまりはっきりしたテーパーがついていません。
(2/26追記)
ブームとヤードも両端に向かってテーパーをつけます。45mm角を38mm角まで細くするだけですが、スポークシェイブとカンナで仕上げます。写真は奥からテーパーのついたブーム、マスト、ヤードです。
エポキシ・シーラーで防水加工をし、その後ハリヤードを通す滑車やマストステップの造作などを済ませたらスパーの製作も完了です。
(2/28追記)
マスト先端に切り込みを入れ、そこにハリヤード用滑車を取り付けます。出来上がったマストにノコを当てるのはちょっと勇気がいりましたが、ここにはコア(心材)を入れてありますから強度的には問題ないでしょう。滑車の心棒になるボルトを通したら、切り取った木片で先端を塞いでやります。
またブームエンドにも小さな滑車を取り付けておきますが、これはアウト・ホールのコントロール・シートを通すためです。セイルのトリムなんていらないと思っているのですが、まぁ後で付けることもしないでしょうからついでに。
最後にマストステップに嵌め込むため、マスト下部を四角く整形して(ここにもコアを入れてあります)スパーの製作は完了です。
5-61 マストを四角に(3/2)
この船のマストはステーで支持されず前スウォートにあるマストホールに差し込んでいるだけです。マストホールは丸い穴ではなく四角、マストがぐるぐる回らないためですが、作ったマストは中空円形。そこでマストホールの部分だけ四角くすることにします。
写真のような木枠を作り、そこに硬めのエポキシ・フィレットを盛り、マストを嵌め込み蓋をしておきます。エポキシが硬化してから木枠を外せばこの通り、丸いマストの周囲が四角くなりました(うーん、一か所エポキシの抜けが出来た)。研磨し、形を整えて完成です。
5-62 木製パッドアイ、フェアリードの製作(3/7、3/12、3/13最終)
YBMで同型艇に乗っていらっしゃるJollyhotさんから言われました『ブロックも木製にするんでしょ?』 もちろんそうした艤装品を売ってるところもあるし、ブロンズ製のものだってあるけれど、作れるものと無理なものはあるわけでして。でも、ブームやマストにつけるアイ(設計図ではクリップと呼んでますが)だけは木(マホガニー)で作ろうかと思いまして、だってプラスチックより似合いますよね(マホガニーの端材があるし)。
クリップも単にコントロールラインを通す小さなもの以外にパレル・ライン(ブームあるいはヤードをマストに固定するもの)を通すちょっと大きめのものも必要です。こちらはパレル・ラインとハリヤードを通す必要があるため穴が二つ。どちらもエポキシで防水加工したのち、ビス穴を開けてからブームあるいはヤードに固定します。
(3/7追記)
なにせ相手が小さいためビス穴開けるにも気を使う。全部で8個のクリップを用意しましたが、一つ一つ穴の位置を図るのも面倒なので治具を製作。また3mm径ステン・タッピングを使うのですがネジ頭が5mmあり、これを埋める穴を開けるわけにもいかずネジ頭の方を削ることにしました。
写真左がブーム後端、アウトホールのコントロール・シートを通すフェアリードと滑車が見えています。両脇のクリップにメインシート用ブロックをぶら下げます。フェアリード下に小さな穴が二つ見えていますね、これは取り付け位置を間違えて開けちゃった穴、あとで埋めておきます。こうした取り付け位置は設計図には記載がなく、セイル広げてみて位置を決めました。写真右がブーム先端で、マストにぐるっと廻すパレル・ラインを通すクリップとダウンホールを通すクリップが見えます。
(3/12追記)
こうしたクラシックなリグの艤装は経験がほとんどなく、まぁ特別変わったところはないものいまいちよく分かってないところがある。そこで、艤装品取り付けのためのアイやらクリップやらを接着したブームとヤードにセイルをあてがってみました。するとあちこち不具合というかこうなっていた方が良いよなぁと思うところが出てきた。
一つはセイル端をブーム、ヤードにくくりつける穴。設計指示書通りに(適当な位置に)穴を開けました。こんな具合、セイルに付属してきたのはマニラ麻風4mmのシート。これを穴に通してグルグル巻きつけセイルを固定するわけですが、やっぱり緩みますよね(シートで結ぶかあるいはソフトシャックルで固定するかは後のこととして)。そこでブームとヤード端にセイル固定用のクリップを追加することにしました。また、アウトホールを引っ張るアイの位置に不具合があったため、これも変更。というわけで、小物作業が続きます。
さてこれでスパーの小物製作は終了。次は実際の艤装品、ブロックやらクリートやらの取り付けなのですが、これらは実際にマストを立ててみないと位置が決められないものがあります。さぁ、いよいよ船を工房から地上に出す算段をしないと。
(3/13追記)
スパー艤装が終了しました。全体を写真に収められませんが、手前からブーム、マスト、ヤードです。
さて、これにてこのページはお終い。昨日、艤装品取り付けやらコントロール・シートの引き方、留め方などを考えていたらまだまだ工程が色々必要。
このところずっと休みを取っていなかったのと、船を陸置きさせてもらう承諾を得ていた近くのマリーナ、オーナーが亡くなり廃業してしまったため、船を置く場所を新たに探さねばなりません。そんな訳で肉体的にも精神的にもちょっぴり疲れているので、少しだけ休もうと思います。近々、新たに「艤装品取り付け」のページを更新するつもりです。