S&G工法の情報源

カヤック、ディンギーを問わず設計図を入手しても、建造のためのマニュアルが付属しているとは限らない。簡単な数枚の手引き・指示書が付属すれば良い方で、それも木造艇を作った経験のある人向けに思えます。『設計図を購入したけれどマニュアルが付属しなかったので、別のビルダーからキットを購入した』という記事を読んだことがあります。

製作の様子

多くの方がブログで製作記を公開なさっており、いずれも役に立つのですが、ブログはその特性でしょうかあまり資料としての閲覧性が高くない。そこで下記に参考になった映像、DVD、マニュアルなどをご紹介しておきます。

カヤック自作サイト

  • building the Chesapeake 16 Wooden Sea Kayakメリーランド州在住の若者TimがChesapeake 16を自作する工程を24ステップにわたって詳細にサイトにまとめてくれている。Tipsや失敗など大いに参考になります。
  • Building the Pygmy Arctic Tern 14Pygmy Boats Inc.のArctic Tern 14(シングル・チャイン艇)を自作する過程が画像付きで詳細に解説されている。Pygmyの特徴と思われますが、シアー材を取り付けていません。
  • Building the Pygmy CohoPygmy Boats Inc.のCoho(マルチ・チャイン艇)を作る過程が画像付きで詳細に解説されています。マルチ・チャイン艇なのでその工程は大分異なります。この船もシアー材を取り付けていません。
  • 建築屋のシーカヤック作りブログなので製作過程を一覧するのが大変ですが、拝見していて一番お勉強になりました。それもそのはず、作者はプロの大工さんなので、もの作りに対する姿勢そしてもちろんその技術も尊敬。お子さん連れのカヤックツアーでは素敵な親子関係もうかがえ、こんなお父さんと育つ息子さんは幸せですね。
  • Building The Bear Mountain MagicこれもWest Coast Paddler内のカヤック製作ギャラリーです。277枚の写真と説明つき製作過程がとても参考になります。製作者は女子なので、カヤックには飾りの「光り物」がいくつも、などとからかっていられないほど丁寧で見事な仕上がり。マルチチャイン艇ですが、フレームを多用し(その後除去)外板をS&Gしていき、ハルとデッキの接合もS&Gです。Figerglassing後のエポキシとニスのコートが5回!!
  • Wood Duck 12を作る同じCLCのWood Duck 12をキットから作っている。マニュアルの記述にいくつも変更・改良を加えていらっしゃる。特にパネル接合のフィレッティング(maximum strength with minimum weight.)、グラッシング時のエポキシ垂れを防ぐ方法などとても参考になります。ハルとデッキの接合部フィレッティングに際しての決意表明には思わず笑った。"I picked up my tools and dove into the inferno. "

カヤック設計図、キット、完成品の入手(順不同)

  • Guillemot KayaksCLCにデザインを提供しているカヤックデザイナーNick Schadeのサイト。細身でとても優美な典型的グリーンランド・カヤックをデザイン(製作)している。こちらの広告はxda-developersのフォーラムで目にしますが、ちょっと不思議。
  • Custum Handmade Wooden KayaksNick Schadeのサイト。ここのカヤックは工芸品(Fine Art)ですね。ストリップ・プランキングに加え、カーボンファイバーによる補強など実に手が込んでいるし、そのため完成品はお高い。
  • Shearwater BoatNick Shadeの兄弟、Eric Shadeのサイト。私が製作しているWood Duck 12は彼が設計した物です。
  • Chesapeake Light Craftカヤックのみならず手漕ぎボート、ディンギー、(小さな)クルーザーにわたるWooden Boatの製作、キット販売を行っている会社の中ではおろらく一番の大手。パドルやPDFもお安い。場所は合衆国東海岸アナポリス。私はここからキットを個人輸入しました。
  • Pygmy Boat Inc.CLCとは思想が違うようで、製作工程が違う(こちらの方が作業が多いかな)けれど、いずれも美しいカヤックです。場所は合衆国西海岸ワシントン。
  • JEM Watercraftここは伝統的シーカヤックというよりリクレーショナルカヤックのデザインを提供しています。sit-on-topカヤックまであり、製作仲間のIさんはここから設計図を入手しました。それに、ギャラリーの写真のある艇種では全部にイヌが乗っています!
  • Blue Heron KayaksRoss Leidyによるカヤック製作とデザインサイト。ストリップ・プランキングによる細身のグリーンランド・カヤックが主だが、有り難いことにデザイン・ソフトウェアが公開(フリーソフト)されている。また、how-toのいくつかは大変参考になります。
  • One Ocean Kayaksカヤック設計、販売をしているサイトの中ではカヤック製作についての詳細情報が一番豊富です。実用的カヤック製作ハンドブックと呼べる小冊子の販売もしています。
  • Laughing Loonこちらもストリップ・プランキングによるカヤック・デザインのサイトだが、なにが気になるって、その名前とロゴ!なんと「Great Northern Diver(大オオハム)」ではないか!ページの一番下にあって見つけにくいですが、メニューの中には「How-to Make a Transparent Glass Lay-up」というエポキシ作業についてのTipsがあり、これにはビックリ。またメニューにあるStrip Build法はたいそうユニークで、その工法の船を造ろうとしている方にはきっと有用だと思われます。リンクも充実しています。

エポキシ作業について

  • How-to Make a Transparent Glass Lay-upLaughing Loon内の記事、エポキシのファイバーグラッシングを透明に仕上げる方法について述べているが、特徴は「薄い(粘度の低い)エポキシを使うこと」、「温度(室温、木材の温度、エポキシの温度)を上げること」、そのために「ヒートガンを使用すること」まで述べている。またエポキシを塗るのに使うスキージ、刷毛、ローラーの特徴、ベストはどれかについても述べている。
  • The Epoxy BookSystem Threeが発行している「エポキシ・ブック」へのリンク。
  • The Epoxy TestOne Ocean Kayaks内のページで、6種のマリン・エポキシの粘度、透明度、耐候性、アミン・ブラッシュの有無等をテストしている。

製作方法と必要な材料などについて

  • Marine Plywood (BS 1088)マリン合板とその規格(British Standard 1088)についてWikipediaのページ。
  • The History of Okoume Marine Grade Plywood:マリン合板のパイオニアであるBruynzeel社の歴史とマリン合板について。もともとは家具(ドア)製造会社だったそうな。どういう訳か化学製品会社のサイト内のページ。(not found)
  • Marine Plywood, BS1088 and Lloyd's of LondonThe WoodenBoad Forum内の記事。カヤック製作に使用されるマリン・プライウッドの規格(BS 1088)とLloyd's規格について、それを満たす製品について述べている。
  • 合板の比較One Ocean Kayaksサイト内の記事で、カヤック製作に使用する各種合板の色味、表材の厚みなどを写真付きで比較している。表材の厚みの違いによりスカーフが難しくなるのが良く分かる。ラワン合板の心材抜けが情けない。
  • 木造艇製作の周辺技術丹羽 章二「木造艇製作の周辺技術 その15」「KAZI誌」1994年12月号の再掲と思われる。ヨット、カヤック製作で使用する合板(プライウッド)について考察している。
  • TMCの自作ボートマニュアルTMC(タツマリンタイムコンサルタンツ)内のボート自作に関するページです(Top-自作デザイン-自作マニュアル)。マニュアル内の「ボート材料比較、木材、ボート用木材、ボート用合板」の箇所は参考になります。マリン合板に代わる材としてロシアン・バーチ(接着剤に耐水合板で使用されているメラミン樹脂より強固なフェノール樹脂を使用している。5mm厚からしか入手できず、比重が大きいのが難点か)を挙げていらっしゃる。
  • S&G工法の実際の映像Pygmyboats LTD.による”Arctic Tern 14 Construction Sequence”と題したYoutubeへの投稿で、33工程に及ぶ55分の映像が分割されアップロードされています。その中の特に”18. Glass the Outside of the Hull”はファイバーグラッシングの様子が映っていて大変参考になります。このカヤックはS&G工法の中でも特にエポキシによる接着・強化を旨としているようで、シアー材は無し、フィレッティングとグラステープによる強化も無しという徹底ぶり。パネルの接合はバットジョイント、合板の曲げ加工より多数のパネルを使って船体のカーブを出すというPygmyboatsらしい作りになっています。
  • INDEX of Stitch & Glue building pagesOne Ocean KayaksサイトのS&G工法を説明したページ群の目次です。カヤックを製作・販売している会社ですが他のどの製作者のサイトよりその説明が参考になりました。様々なTipsは、実際に製作してみてなるほどと思わせるものでした。
  • S&G工法と合板を接ぐ方法One Ocean Kayaksサイト内のS&G工法を説明したページ。特に合板の接合方法(ページ1から3b)についての解説が丁寧で参考になりますし、発展版パズル・ジョイント(ScarfLOCKと称している)の解説もあります。ページ2(scarfing)には丸ノコでスカーフ作る方法も写真で紹介されていますが、これの治具はWest Systemで販売していますね。
  • パズルジョイントの作り方合板を接ぐスカーフ・ジョイント、バット・ジョイント以外の方法としてパズル・ジョイントがありますが、その試行例です。2006年の記事ですが今ではキットメーカーでも採用しています。記事はDuckworks(boat builder向けサプライヤー)サイト内ですが、見つけにくいので直リンクです。
  • ファイバーグラスによるバット・ジョイントH. H. Payson("Boats with an Open Mind"の著者)によるもう一つの合板を接ぐ方法。バット・ジョイントですが木片の替わりにファイバーグラスで両面を補強しようというもの。Pygmy Boatsの製品はこの方法を使っていますね。(改訂されたサイトにはこのページが見つけられません)
  • Woodhaven Scarfing SledDuckworksのサイト内にあるページ。スカーフ・ジョイントを作るには鉋で削る、ベルトサンダーで削るなどありますが、ここでは専用治具上にルーターを動かして削っています(動画あり)。正確でしょうし、量産するならこういうものが必要かも知れません。
  • KayakFoundry - Kayak Design Softwareカヤック設計用ソフトウェア(フリーウェア)です。Blue Heron KayaksのRoss Leidyが開発(?)したもの。同サイト内のフォーラムにはこのソフトで設計した色々なカヤックデザインがアップロードされていますので、それを読み込んで雛形として使うこともできます。図面からフレームを抜き出して印刷することも可能です。
  • Stitch -N- Glue Lightこちらもカヤック設計用ソフトウェアで、Washington Wood Craftが公開しています。ダウンロードにはメール登録が必要です。上のKayakFoundryはもっぱストリップ・プランクによるラウンド・ハルの設計用(無理すればチャイン・ハルも可能)なのに対し、こちらはその名前の通りチャイン・ハルを意図したものです。設計したファイルを送ると原寸図を印刷してくれるサービス(有料)もあります。サイトには使用法の詳しい説明もある。
  • Strip Building TechniquesLaughing Loon内の記事。ストリップ・ビルド・カヤック製作で最も重要なストリップの張り方について。「(標準より)薄いストリップを使うこと」「ヒートガンで加熱してストリップを曲げること」といったTipsを述べている。

材料の購入先 

  • Hiro Wooden Canoe Shop国内でシステム・スリー社のエポキシを取り扱っている。The Epoxy Bookの日本語訳を入手できる。
  • ミヨシ・コーポレーションLloyd's規格のオランダBruynzeel社製マリン・プライウッドを取り扱っている(ひょっとしたら在庫があるかもしれない)。
  • 米屋材木店専門材木店(横浜南区)なので取り扱い樹種が豊富で専門知識も確か。プロの加工機械を備えており加工にも対応してくれます。私はここで4x8耐水ラワン合板やマスト用のスプルース材(加工も)を購入しました。
  • FRP材料販売 Featherfieldここからファイバーグラスなどを購入しています。薄手(4oz、100g/m2)のものがありますし、こちらのグラスは幅が104cmあるので使いやすい。