マリン合板について

CONTENTS

  1. 序文
  2. オクーミ材のマリン合板
  3. 規格
    ・BS1088
    ・Lloyd's Resister
  4. 置かれた現状
  5. ではどうするか
    ・キットにする
    ・代替案
  6. ついでにマホガニー

1.序文

S&G工法でカヤックを造ろうと考えたとき、参考にしたどの文献にも材料は「マリン合板(Marine Plywood)」と書かれていました。初めて聞く「マリン合板」とはどんなものか調べてみると、それは船舶用に作られた耐湿性、耐候性、接着性の高い合板であることを知りましたが、実物を目にし実際にマリン合板を使って船を作ってみると、その特性はそれだけに止まらないことが良く解りました。

船は曲線から出来ていますね、滑らかにカーブしたハルを作るためには木を捻じり曲げなければならない。S&G工法では合板のパネルをフレームに従って曲げることで設計図通りの計算されたハルが出来上がりますから、使用する合板は良く曲がるものでなければ製作が難しい。

英語版Wikipediaの項にはちゃんと
This is useful when a boat design calls for tight radius bends such as near the bow in a single chine design because of its flexibility.
と書かれている。

私が知っているのはフランスJoubert社製4㎜厚マリン合板と中国製(規格に準じていない)6mm厚マリン合板だけですが、そうしたわずかな経験からも「木造艇製作にはマリン合板を使うべし」という言説に納得がいきます。なるほどとは思うものの、マリン合板の日本における入手の困難さとその法外ともいえる価格ゆえ、木造艇作にはマリン合板使わないとダメだよとはとても言えない。

ディンギー製作に着手しようとした2012年にマリン合板を探してあちこち問い合わせました。ホームセンターに置いてないのは勿論のこと、材木店でもその名前を知っているところはなく、新木場にある合板専門店でも取り扱いはなく別の合板を勧められました。検索に引っかかった名古屋にある商社がオランダBruynzeel社製品を輸入していることを知り、電話で問い合わせましたがマリン合板の在庫はほとんどなく再入荷の予定もないこと、さらに5桁に達するお値段とそれ以上の送料を知らされ、マリン合板入手をほとんど諦めかけました。この状況は今でも好転していないようで、近年同じ商社に問い合わせた自作仲間は「5㎜厚で1枚25,000円、在庫も7枚で終わり」と言われたそうです。

さて、愚痴はこれ位にし、マリン合板に関するこもごもをまとめておきます。

2.オクーミ材(Okoume)のマリン合板

マリン合板(Marine Plywood)と称される合板は、もっぱら船舶用(外装の用途にも)として耐湿性に優れた丈夫な南洋材から作られたものを指します。船に使うわけですから、丈夫だからと言って外用デッキ材のように重く硬い木(イペとか)では困るわけで、主としてオクーミ材(Okoume)あるいはサペリ材(Sapelli)メランチ材(Meranti)のべニア(薄板のこと)を積層して作られます。下はYouTubeに投稿されているマリン合板製作の様子、ここでは化粧材に桜材べニアをさらに貼っており、船の内装用ですね。120℃で12kg/cm2で7分間圧着、積層厚はこれにより10%減じるそうです。

オクーミ(Okoume、学名Aucoumea klaineana、Burseraceae科Aucoumea属A. klaineana)の主たる産地は中央アフリカのガボン、太さ1m、樹高30m~40mにもなる大木です。ガボンの主要輸出品だそうで、それゆえガボン・マホガニー(マホガニーとは別の属)あるいは単にガボンと呼ばれることもあり、淡いピンクから薄い茶色の綺麗な木材です。比重は0.43とマホガニーの0.59~0.64よりも軽く加工性の高い材ですが、その軽さの割には丈夫なためマリン合板の材料として打ってつけなのでしょう。

  • 左写真はスカーフジョイントの際の6mmマリン合板(5層)ですが、接ぎ目のない4x8ftの綺麗な一枚板、木目をハイライトするため少し色を濃く加工しています。積層部の接着ラインが濃い茶色でハッキリ出ています。
  • 中写真はもともとのマリン合板の色に近い。スカーフ部を見ると表材の厚みが分かると思いますし、フェノール系接着剤のラインがはっきり見えています。
  • 右写真はJoubert社製4mmマリン合板(3層)。カヤックのバウパネル、これだけの幅の材を捻じり曲げ左右パネルを合わせられるほど曲がりやすく折れにくい。

3.規格

・BS 1088

日本で生産される合板はJAS規格で統制されていますが、マリン合板の規格には英国のBS 1088(British Standard 1088)があります。船舶用合板規格ですから、安全性担保のためにその特性が細かくかつ厳密に(過剰とも思えるが)定められています。それをかいつまんで記すと、

  • 接着剤:湿気、水、温度さらに微生物への耐性の高いフェノール系等の接着剤を用い、WBP(Water Boiled Proof or Whether Boil Proof、長時間の煮沸に耐えること)であること。メラミン接着剤を使った普通合板が4時間余りの煮沸で剥がれるのに対し、フェノール接着剤を用いたものは24-48時間耐えるそうですが、厳密な煮沸時間の規定はなく、長時間の耐性があれば(生産者の良心次第で)WBPを名乗れるとのこと。
  • 表材:節のないこと(少数のピンスポットは許容)、接ぎのないこと、表裏無しの両面仕上げであること
  • 芯材:抜けのないこと
  • 積層:所定の厚み以上の表材(べニア、薄板のこと)と芯材を積層してあること。4.8mm厚の合板なら表材の厚みは(表裏とも)最低1.3mmあること

このようにBS 1088に準じた合板は、

  • 湿度や温度変化に曝露されてもその接着性能に心配はなく
  • 表裏とも大変綺麗で
  • 表材が厚いため、研磨しても容易に積層面が出てしまうことはなく
  • Okoumeの特性として軽く柔らかく
  • かつ芯材が普通合板ほど厚くないため曲げやすい

ものです。こうした厳格な規格検査に合格した合板は「BS 1088」を謳うことがことが出来ます。

Lloyd's Resister

BS 1088は英国の規格ですが、これに準じたものとしてLloyd's Registerがあります。これはロイズ船級協会が、保険契約にあたって船舶の製造方法や材料に対して定めた規格です。高額な船舶保険ですから相手の船の製造法やら材料について認証を求めるのは当たり前、鉄板溶接方法や溶接材料についてもLloyd's Resisterが存在し、その一つとして船舶用合板にもLloyd's Resisterがあり、Lloyd's Resisterの合板を使っている船ならば安心(保険業の立場から)というわけです。

BS 1088を取得しているマリン合板を製造している業者は限られていて、私の知る限り(他にもあるでしょうが)

  • Bruynzeel(オランダ)
  • Robbins Timber(英国);こちらは他の2社と違い大手製材会社ではないから小売りもしてくれ、雑誌の広告にはWorldwide shippingすると書いてあります。価格表はこちら

があります。世界中でも規格に通ったマリン合板を製造している会社は数えるほどしかなく、ニューカマーとしてはJoubert Plywood(ジュベール、フランス)があります。ジュベール社のマリン合板はBS 1088スタンプはないもののLloyd's Resisterなのでその性能には信頼が置けますし、カヤック・キットに使われていたその製品は大変綺麗でさすがと思わせるものです。

しかしながら、こうした船舶用合板の規格は日本にはありません。フェノール系接着剤を使用している耐水合板(1類や特類)はありますが、外装用耐水合板であって船舶用ではないから、例によって表材は極めて薄いし接ぎも補修痕もあります。無垢材に比べるとなんとなく下に見られる合板だからでしょうか、日本で生産される合板は表材が極めて薄く(綺麗な表材を薄くして沢山生産したいからでしょうね)研磨するとすぐに下の積層が出てきてしまう。もっとも経済性やら生産性を考えたら、規格に準じたマリン合板などとてもじゃないが作ってられないでしょう(日本では需要も少ないし)。しかし、基準は通っていなくてもオクーミ材合板が欲しいという需要はあるわけで、私が幸運にも譲ってもらえたマリン合板はこうしたものでした。中国製(アフリカへの進出が盛んですから)、表材に接ぎはないが、芯材に抜けがありましたし、2年置いておいた間に接着が剥がれた個所がありました。

4.置かれた現状

自作仲間にマリン合板の話をしていたら、風呂に浸けるわけじゃないからWBP合板なんて必要ないよと言われたことがありますが、煮沸に長時間耐えるというのは検査法のことで何も船をお風呂に浮かべても大丈夫ということではないでしょう。そうした検査にも耐えうる耐水性能は過酷な環境に置かれる船には必要なことでしょうし、ホームセンターなどで廉価に入手できる合板の(手抜きとも思える)製造方法を知ると、船にはWBP合板を使っておいた方が良いよなと感じます。

下の写真は友人が自作したSUPのスケグがもげちゃったところで、エポキシの強力な接着力ゆえ接着面からは剥がれていませんが、被接着体である合板の表層が積層面から剥がれています。剥がれた下の面を良く見ると、接着剤痕はなくそこには(恐らく)両面テープが露出しており、しかもそれは全面ではなく間隔を空けて貼られていました。積層面全面に接着剤すら塗布しないのか。確かに両面テープ貼って高周波か何かで熱を加え接着してしまう方が接着剤全面塗布より効率的かつ経済的でしょうね。内装用普通合板の廉価なものはこうして生産されているわけで、やっぱり船には使いたくない。

break_03.jpg

5.ではどうするか

英国から取り寄せたディンギーの設計図には、合板パネルにはマリン合板、スパーには良質のスプルース、造作材には米松(Douglas Fir)かマホガニーを使えと(気安く)書いてありました。木造艇を作ろうとしてすぐに直面するのが木材の入手難です。国際12ftクラス(A級ディンギー)を無垢材のクリンカー張りで造ろうとしたら、その材はどこで入手したらよいのだろう?北欧産の良質なパイン材は日本では生産しないし、お決まりのマホガニー(本物のマホガニー)はワシントン条約で規制されまず手に入らないから代替品(アフリカン・マホガニーなど)を使うしかない(入手できればの話です、これについては別項で)。

西海岸ワシントン州に育つ良質な米赤杉(Western Red Ceder、日本の杉に比べ寒いところで育つから大変木目が詰んでいる)を求め英国から移住し、ボート工房を営みもっぱらエイト用シェル艇を造り、全米選手権出場艇のほとんどすべてが彼の手になるものだったというボートビルダーのことを取り上げた本がありましたが、同じ杉(Ceder)とはいえ温暖な気候で育つお馴染みの杉材は、あの緻密でない木目を見ると果たして船材にむくのかどうか。木造艇を作るならばやっぱり木そのものについての知識がないといけないのですね(反省)。先輩の自作仲間にそうした方面に明るい方がいらっしゃるのですが、そうした方ならば最適な樹種を選べるでしょうし入手の伝手もお持ちかもしれないけれど、駆け出しのアマチュアはなかなか。

キットにする

話をS&Gに限るとして、まず直面するのはマリン合板が日本ではほとんど入手不可能ということです。これには打開策があり、キットを海外から輸入してしまえばBS 1088なりLloyd's Resisterのマリン合板製部材が容易に手に入ります。私が最初に作ったカヤックは米国CLCからキットを個人輸入したものでしたが、今の時代は輸入と言っても身構える必要はなくワンクリックで簡単に購入できます。しかも円が高かった頃だからなんてお買い得と思えました。設計図からロフティングする手間も省け、パーツカット精度も高いし(大抵は設計図から2次元へ展開するソフトのデータを直接CNCルーターなりレーザーカッターなりに渡してカットしています)、材料の無駄もでないしキットは良い選択だと思います。キットで作れる船は限定されますが、オーダーすれば特定の船のパーツを設計図からカットしてくれるという造船所も存在する。

代替案

でもキットは安直、スクラッチから作りたいとなると、樹種の選択と材の入手、つまり材料を自分で作ることになりますが、これは一歩どころか何歩もステップアップすることになりますね、製材(特定の幅、厚みの材を作るため)の道具が必要だしそれなりの腕も必要(やり遂げたときの満足度はキット製作とは比べものにならないでしょうが)。挑戦しがいのあるプロジェクトですが、S&Gで船を一から作ろうとするとマリン合板の入手難に直面しますから、代替案を考えることになります。

  • マリン合板を諦め耐水合板を使う:
     日本でも手に入る1類合板や特類合板はフェノール系接着剤を使用していますから、その接着性能に関しては心配いらないでしょう。しかし、材はラワンですから色味はオクーミ材とは異なりますし、表面は綺麗でも裏面は接ぎや補修痕があり、ハルの外側は綺麗でも内側はちょっとと言うことになる。また、表材が薄いため研磨に弱く、さらに芯材が厚いため捻じり曲げるのが難しい。4mmマリン合板なら曲げられるけれど、同じ4mm厚でもラワン合板では相当苦労するでしょうから、私はカヤックを自作したとき3mm厚耐水ラワン合板(1類、フェノール系接着剤使用)を使いました。色味や補修痕は塗装してしまえば分からなくなりますから、ニス仕上げを諦めれば耐水合板は次善の策として取りうるものでしょう。
    TYPE1合板は材木店に通常在庫はなく取り寄せてもらいましたが、普通のTYPE2合板よりずっとお高い、3㎜(4x8ft)で一枚¥3,500でした。
  • 耐湿性に優れたバーチ合板を使う:
    TYPE1耐水合板と同等のあるいはそれ以上の耐水・耐候性能を持つ合板にバーチ合板があります。フィンランドやロシアを産地とするバーチから作られる合板で、同じ厚のべニア(薄板)を積層しているのが特徴であり、その断面は(バウムクーヘンみたいで)デザイン的にも美しいものです。YouTube動画を見ていると海外のビルダーは船だけでなく工房の様々な道具や冶具製作にこのバーチ合板を良く使っていますが、バーチは硬く重い木です(比重は0.7もある)。私は6mm厚のものをダガーボード、ダガーボードケース、トランサムに使用しましたが、そうした曲げない(曲がっては困る)部分にはちょっと重いけれど適した合板だと思います。しかし、同じ6mm厚マリン合板ならばなんとか曲げてハルが作れますが、バーチ合板をそれほど捻じる曲げるのは無理ではないでしょうか。ハルの重量が1.5倍になると考えるとバーチ合板の使用を躊躇ってしまいます。ロシアン・バーチ合板輸入元ではこれを「マリン用合板」と名付けていますが「マリン合板」と同等と考えるべきではないと思います。
    ロシアン・バーチ合板(フィンランド・バーチ合板は短手方向に接ぎがあります)はTYPE1合板よりも高価です。
  •  S&Gでなく他の工法にする:合板を使うことを止め無垢材を使う他の工法を採ります。
     
    • ストリップ・プランキング:薄く(6mm)細長い無垢材(ストリップ)をハルのカーブに沿ってモールドの上から貼っていく(ステープル等で留めながら)工法です。ストリップの厚み、幅さらに貼る方向次第と思われますが、無垢材によるハルが作れますし、なによりS&Gでは出来ないラウンド・ハルが作れます。
      自作仲間の一人はマリン合板が手に入らないため、S&G用の設計図からラウンド・ハルのモールドを作り、ストリップ・プランキングでのディンギー製作を試みました。ストリップの製作とその貼り込みは大変な手間ですが、ラウンド・ハルの出来上がりは素晴らしいものです。
    • コールド・モールディング:ストリップより薄いべニア(Utile材、Sapele材等)の小片を曲げながらモールド下地に複数層貼りつけていく工法。直交させて積層していきますから強固で軽い、しかも美しいハルを作ることができます(けれど手間は大変だろうなぁ)。
    • GL工法(Glued Lapstrake)は合板使用でしょうから、ここでは割愛します。

以上のように日本ではマリン合板の入手は個人ではほとんど不可能なのが現状、アマチュア・ボート・ビルダーは本当に不幸な状況にあります。手軽なS&G工法で木造艇を自作しようと思ってもマリン合板は売ってない、買う人がいないから企業は輸入してまで販売しない、だからアマチュアは木造艇を作れないと負のスパイラルです。かつてディンギー製作を構想していた時、いっそのこと海外からコンテナでマリン合板を輸入しちゃおうかと考えたことがあります。買値の2倍で個人向けに売れば元は取れるかもと夢想しましたが、買う人がいるだろうか(私が入手したマリン合板はこういう風に中国から規格外のマリン合板を輸入した方から譲ってもらったものです)。どなたかコンテナ一杯マリン合板を輸入しようかと考えてる方がいらしたら、ご連絡ください。私は5枚位買いますから。
 


追記:ニュージャパンヨット株式会社でJubert社のマリン合板(4x8ft、4mm厚)を輸入販売しているという情報を得ました。1枚¥14,400(送料別)

材料の入手難はお金さえ出せばなんとかなる所があります。英国Robbins Timberでは4mmマリン合板(BS1088)を一枚£42.85で売っており今のレイトで6,500円あまりですが、個人輸入したら送料はどれほどかかるのだろう?ホームセンターで普通合板買うならカヤック1パイ5千円ほどの材料費で済むところが、TYPE1合板を使えば2万円かかる。それをマリン合板にし日本で購入すれば7万円を超えてしまう。「材料ケチってもロクなことはない」と言われますから、ここは考えどころ。


6.ついでにマホガニー

憧れのマホガニー、知人が所有している(今はなき)McNulty Boats社のディンギーはそのハルがマホガニーで出来ています。独特の色味と木目はちょっと他の木では得られないし、その加工性は(ほんの僅かな経験からも)優れています。もしこの木がなかったら(植民地から入ってこなかったら)チッペンデールの家具はできなかったことでしょう。また湿気に強く、まっすぐな木目と太い道管ゆえに軽く(比重0.59~0.64ちなみにオークは0.70)木造艇には打ってつけです。

Mcnulty_bosts_longstone.jpg

とはいえ見た目の似た木は沢山あるわけで、赤ラワンだって「これマホガニー」と言われればそうかなと思いますし、実際「なんとかマホガニー」と名付けられた本物のマホガニーではない材が存在します。分類学上の近縁度と特性の類似度は同じではないでしょうが、いわゆる本物のマホガニー(genuine Mahogany)とされるのはMeliaceae科スウィーテニア属(Swietenia genus)に属する僅か3種(キューバ・マホガニー、ホンジュラス・マホガニー、メキシコ・マホガニー)のみで、現在マホガニーの名で流通している木は同じ科(Meliaceae family)ではあるもの本物マホガニー(Swietenia genus)とは別の属の木ですし、中には属どころか科・目の異なる木もマホガニーの名で売られています。

  • 本物マホガニー:Sapindales目Meliaceae科Swietenia属の3種、キューバ・マホガニー(Swietenia mahogani、マホガニーの学名を持つのはこれだけ)、ホンジュラス・マホガニー(Swietenia macrophylla)、メキシコ・マホガニー(木が小さいので使われないそうですが)。ご承知の通りホンジュラス・マホガニーはワシントン条約附属書IIに登録され生産者の検査が求められ、流通量はごくわずかです。
  • マホガニーに十分近いと見なされる木:Meliaceae科カヤ属(Khaya  genus)のいくつかの種は見た目や特性がマホガニーに大変近く、アフリカン・マホガニー(African Mahogany)の名で流通しています。
  • マホガニーに似た堅木:Meliaceae科Entandrophragma属、サペリ(Sapele)、Utileなどはこれです。
  • 名前だけのマホガニー:別の目・科・属のいくつもの木がマホガニーの名前を付けられています。フィリピン・マホガニー、サントス・マホガニー等

材木店でマホガニーが欲しいんですけどとおずおず尋ねてみたら、マホガニーあるよと言われ飛び上がって喜んでも、それが本物マホガニーであることなどまずないでしょう(昔の在庫が残っていたということはあるでしょうが)。つまり「なんとかマホガニー」というのは樹種のことではなく商品名だということです。「何とかマホガニー」と名前を付ければそれだけで売れるでしょうから、大手木材販売会社でもこれはマホガニーと宣伝している例もありますが、その用途がフローリング(床材)となると、丈夫だろうけどそんな硬くて重い木は船には使えませんよね。

ブレストフックとクォーターニーにだけアフリカン・マホガニーを使った私のささやかなウンチクでした。