カヤック造って海へ出よう
S&G工法による船の製作は比較的どころか本当に簡単です。伝統的なクリンカー張り(鎧張り,clinker-built)の船を造ろうと思ったら、船台の上にまずキール(竜骨)を据えて・・・と木工作業が延々と続きますが、S&G工法ではキール、フレーム、ストリンガーなどの骨組もありません(製作途中ではフレームが必要ですがあとでバルクヘッドを残して撤去)。
マリン合板を縫い合わせてハル(船殻)を造り、ハルとデッキも縫い合わせて接合すれば船体の出来上がり。船体をエポキシでファイバー・グラッシングすると軽く頑丈なカヤックの出来上がり。いかにもお手軽かつ手抜きに聞こえるかも知れませんが、その最大のメリットは木/エポキシ複合材(wood/epoxy composit)による(卵の殻のような)モノコック構造にあります。
スライドに見るように(スマフォ、タブレットではスライド・ショウが正常に表示されないみたいですので下の画像をクリック)
- ハルを縫い合わせ
- デッキも縫い合わせ
- エポキシでファイバー・グラッシングすると
- こうなり
- こうなった!
どのカヤックを造るか
Nick Shadeのサイト(あるいはこちら)では彼の手になる工芸品のようなカヤックを見ることができます。その一つは全長18フィート(5.48m)全幅20インチ(50.8cm)というエンピツのように細長い船です。カヤックはそもそもアラスカやグリーンランドで人が漕ぎ長く海を行く船として造られたわけですから、その長さも細さも理に適っているのですが、それにしてもこんな船を見ると『カヤックは乗るものじゃない着るものだ』というモットーもなるほどと思うと同時に、エスキモー・ロールは必須だろうなと感じます。
さてどのカヤックを造ろうかと考えたとき頭に浮かんだのは「(二次安定性は高いけれど一次安定性は低い)漕いでないと沈しちゃう船」はシンドイなぁということでした。カヤック製作仲間のIさんが造った船はこうしたカテゴリーの船なので、釣りをしようと竿を振りかぶったらあやうく沈するところだったとのこと。スピードを求めれば細長い船にならざるをえないでしょうが、お遊びで乗るには高い一次安定性(primary stability)を考慮しないわけにはいきません。
と言うわけで選んだのがNich Shadeの兄弟Eric Shadeが設計したWood Duck 12です。全長12フィート(3.66m)全幅30インチ(76cm)、ハル構造としては一番単純なシングル・チャインのお遊び用カヤックです。ハルは非常に浅いV字型のボトム・パネルとサイド・パネルから構成されていますが、設計の妙でしょうかそのラインはなかなかキュートです。
幅広な船底中央部はほとんど平に近いのですが、バウ(船首)とスターン(船尾)に向かってボトム・パネルを限界に近く捻り、絞り込んでいるため、ちょっとセクシーなカーブを見せています(そのためにバウ、スターン付近にフレームを配しハル形状を維持しています)。このカヤックを製作した方のサイトでは次のような記述を見ることができます。
工夫されたハル形状のお陰で楽に速く漕ぐことが出来る。GPSで測定したら6.4mph(約10km/h、多分nautical mileではないと思う)も出たし、決してレース用カヤックではないけれど、頑張らなくても3時間も漕げば12マイル(約19km)進むことが出来るだろう。
全長5mの船となると車より長いですから、置き場も運ぶのも結構大変。それに比べると3.6mという全長はかなり取り回しが容易ですし、18kgを切る艇重量もありがたい。それに大きなコックピットは乗り降りがとても楽です。
直線的でエンピツみたいなシーカヤックとは違うこのカヤックの姿はなかなかセクシー(単なる好み)。もっともカヤック製作仲間には『ドングリみたい』とか『木靴みたい』と言われていますが・・・
complete kit: $899(建造当時、今は少し値上がり)
wood parts only kit: $649(同上)
plan and manual only: $99
エポキシは輸入不可なので木部だけのキットを個人輸入しましたが、Fedexがドアまで届けてくれて送料約¥20,000。10万円ほどで素敵な木のカヤックが手に入ります(自作となればそれ以外にエポキシやら工具やらが必要ですけど)。付属する製作マニュアルは写真も多く素人向けの懇切丁寧なものです。熟読の上エポキシ作業の練習をしておけば、初心者でも十分製作可能と思われます。