ランサムの部屋
「湖水地方生活産業博物館」には「Arthur Ransome Room」があります。「古い灰色の街」と呼ばれるケンダル(Kendal)はケント川(River Kent)沿いの街です。駅からケント川を下ると右手に街が広がり、左手の小高い丘にはヘンリーⅧの六番目のお妃が生まれ育った城跡が望めます。
湖水地方生活産業博物館
ケント川を下流へ1kmほどいった川沿いにアボット・ホール(Abbot Hall Art Gallery)と湖水地方生活産業博物館(Museum of Lakeland Life and Industry)が並んで建っています。ギャラリーにはターナー(Turner)やラスキン(Ruskin)の水彩画もありますが、お目当ては隣の博物館で、ここにランサムの書斎が再現されています。
ランサムの部屋
建物の二階のすみっこ、渡り廊下に「Arthur Ransome Roomへは廊下を渡って下さい」と書かれた看板があってそれを見ただけでドキドキしてきます。すぐに「Swallows and Amazons For Ever!」の文字。ランサムの死後、残された厖大なメモ、梗概、スケッチといったものから、彼が父親から贈られてずっと使っていた机(この机は母親が Low Ludderburn の彼の元へ配送したもの。「机が届いた」と母親に礼状を書いている。1930年7月4日付)などが妻 Evgeniaから寄贈されました。
壁にはドーラ・コリンウッド(Dora Collingwood/Altounyan)が描いたランサムの肖像画、1928年の夏を共に過ごしたアルトゥニアン家(Altounyans)の子供たちの写真、ノーフォーク湖沼地帯(The Norfolk Broads)で彼が率いた艦隊の写真、所蔵されていたコニストン湖の古い地図、そしてもちろん彼の手になる物語の挿絵の原画などが掲げれています。机の上にはタイプライター、ノート、その開かれたページには手書きの手旗信号の絵。そしてインク壺の蓋には「HMV」の懐かしい犬の絵を見ることができます。(フラッシュを焚かなければ撮影は許可されています)
〇ランサムの肖像画 〇机の上には手旗信号のスケッチ
〇左から長女タキ、長男ロジャ、母ドーラ、三女ティティ、赤ちゃんのブリジット、ナース
〇コニストン湖ピール島南端にある「秘密の港」でのMavis号とアルトゥニアン家の子ども達
ブローガン(Hugh Brogan)は「アーサー・ランサムの生涯」を執筆するためにここで厖大な資料を調べているうちに、ランサムが手を付けながら完成させることのなかった13作目の物語を発見しました。これはその後「Coots in the North」としてブローガンの手で世に出ることになりました。