コキー

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Cochy(コキー

スカラブ号のモデルとなったこの船は毛針の名前をもらいました

"I name you SCARAB! And best wishes for fair winds!" --- Dorothea*5

ツバメ号?

 1992年のこと、1パイのディンギーがウェスト・ハイランド・ホテルの庭で見つかりました。長くそこに放置されていたこの船のかつての所有者は、アーンサイド(Arnside、ケント川河口の街)にある学校の校長先生だったJohn Barnesでした。彼はこの船がランサムにゆかりの深い船、おそらく登場する「ツバメ号」であろうと思い、12歳になる息子のために購入したのでした。それは1950年代半ばのことでしたが、この美しいディンギーは彼が退職するまでEARNSEAT校のヨットスクールで使われ、生徒たちから(間違って)ツバメ号と呼ばれたのでした。

誕生

 校長先生がツバメ号だと思いこんでいた彼女の本当の名前はCoch-y-bonddhu、愛称「コキー(Cochy)」。彼女はアーンサイドにあった造船所クロスフィールド(Crossfield)において、ランサムが釣りを教えた生徒の一人レナルド(Charles Renold、1883-1967)のために1934年に建造されました。
 1935年までランサムはウィンダミア湖に近いLow Ludderburnに住んでいましたが、ここで友人のレナルドに釣りを教え、さらに帆走に引き込もうとディンギーを買うように勧めたのです。ランサム自身がアーンサイドまで足を運び、船ができあがるまでその工程をチェックしています。1934年3月6日付けの手紙にはほとんどできあがった「コキー」を下見にいったときの様子が書かれています。

とても美しいスプルース材で張ってあったよ。本当にいい買い物だと思うし、まったく羨ましいかぎり。とても綺麗だからペンキを塗るのはもったいない。ペンキはいつだって塗れるから、しばらくはニス塗りのままにしておけば良いよ。*6

 美しいニス塗りの彼女はレナルドのお気に入りの毛針の名を取って「Coch-y-bonddhu」と命名されたのですが、最初から「コキー」と呼ばれたそうです。またせっかく船を手に入れながら彼は帆走より釣りの方に夢中だったようで、彼女はすぐにランサムに譲られました。こうしてウィンダミア湖でランサムは「ツバメ号」と「コキー」の二ハイのディンギーを所有することとなりました。

Windermere蒸気船博物館のコキー Windermere蒸気船博物館のコキー Windermere蒸気船博物館のコキー

 「コキー」は偶然にもかつて「ツバメ号」を建造したクロスフィールド生まれですが、多少小ぶりで(Dickは『たった13ftしかないの?』と言っています*1)「ツバメ号」とは違ってセンターボードを備え、船尾のトランサムにはメイン・シートのトラベラーも付いています(イラストに見るスカラブ号にトラベラーはありません)。

コキーのトランサム、トラベラーに注目

スカラブ号のモデル

 ランサムは彼女がとても気に入っていたようで、1935年に湖水地方を離れ東部へ転居した時にも連れていきましたし、1940年にコニストンへ疎開してきた時も彼女と一緒でした。プライス(Kendall-Price)の本*2にはHealdの桟橋から「コキー」に乗ろうとしている妻Evgeniaの写真が載っています。コニストン湖で「コキー」を帆走させていたこの時期、11作目「ピクト人と殉教者」が書かれ、彼女はその中に登場する「スカラブ号」のモデルとなっています。
 「コキー」はランサムが一番長い期間生活を共にした船でしょう。それは1935年からランサムが湖水地方での生活を諦める1950年まで15年間に及びます。アーンサイドの学校で使われていた間「ツバメ号」と間違えられていた「コキー」ですが、彼女のおかげで「これがあの『ツバメ号とアマゾン号』のツバメ号なんだ」と夢を育んだ生徒もいたかもしれませんね。現在「コキー」はウィンダミアの蒸気船博物館で、訪れる人々にその美しいニス塗りの姿を見せてくれています。*3*4


*1 Ransome, Arthur. The Picts and The Martyrs. p.19. Cape.
*2 Kendall-Price, Claire.(1993) In the Footsteps of the Swallows and Amazons. p.21. Wild Cat Publishing
*3 この項の内容はその多くを蒸気船博物館の展示パネルに依っています。資料を筆記してきてくれたMie T.に感謝
*4 2006年に蒸気船博物館は改修のため閉館されたので、2008年よりCochy号はWindermere St Anne's Schoolにて公開されているとのこと
*5 Ransome, Arthur. (1943) The Picts and The Martyrs. p.142. Cape.
*6 Brogan, Hugh. (1997) Signalling from Mars. p.227 Cape.

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